年金制度は、私たちの老後の生活を支える重要な仕組みです。しかし、実際にどれだけの金額を受け取れるのか、不安の声をよく耳にします。子育て世帯やひとり親の家庭など、生活費の負担が大きいケースでは、将来への備えは切実な問題です。
本記事では、年金の平均受給額について、制度の概要や職業別・世帯別の金額、受給額に影響を与える要因を解説します。
記事を読めば、将来の年金受給額の見通しを確認でき、貯蓄や資産形成の計画に役立てられます。年金の平均受給額は、2022年度の統計では、夫婦2人分で月額約22万円です。ただし、金額は平均値であり、個人の状況によって大きく異なります。
年金制度の概要と平均受給額

年金制度の内容や受給額の目安について、以下の3種類に分けて解説します。
- 国民年金
- 厚生年金
- 共済年金
国民年金
国民年金は、日本の公的年金制度を支える重要な制度です。20歳から60歳までの、すべての国民に加入する義務があります。2023年度は65歳から受給開始となり、受け取れる金額は満額で月額約6.5万円です。保険料は月額16,520円で、40年間納付すると満額受給できます。
国民年金には、以下のような制度や仕組みがあります。
- 学生や低所得者向けの保険料免除・猶予制度
- 60歳以降の任意加入
- 障害基礎年金
- 遺族基礎年金
- 繰上げ・繰下げ受給
受給資格を得るには、10年(120か月)以上の保険料納付が必要です。未納期間がある場合、年金額が減額されるため注意してください。国民年金は、老後の生活を支える重要な制度です。将来の安定した生活のために、保険料を忘れずに納付してください。
厚生年金

厚生年金は、会社員や公務員が加入する年金制度で、老後の生活を支える収入の柱です。保険料は、給与の一定割合を労使折半(従業員と会社が半分ずつ負担)する仕組みです。従業員の負担を軽減しながら、安定した年金制度を維持できます。受給開始年齢は65歳からで、平均受給額は2021年度で月額約15万円です。
» 老後の生活費の目安や準備の仕方について詳しく解説
金額は加入期間や報酬に応じて変動し、長く働いて給与が高かった人ほど受給額が増えます。厚生年金には、老齢厚生年金以外にも、遺族厚生年金や障害厚生年金などの給付があります。在職老齢年金制度により、収入に応じて支給額が調整される仕組みも特徴的です。
働きながら年金を受け取る場合は、在職老齢年金制度の影響を受ける可能性があるので、注意が必要です。マクロ経済スライドによって年金の給付水準が調整される仕組みもあります。少子高齢化に対応するために導入されています。
厚生年金には国民年金(基礎年金)部分も含まれるため、厚生年金の受給者は基礎年金も同時に受け取り可能です。物価スライドの採用により、年金額は毎年改定されます。
共済年金
共済年金は、公務員や私立学校の教職員向けの年金制度で、職業により以下の3種類に分類されます。
- 国家公務員共済組合
- 地方公務員共済組合
- 私立学校教職員共済
2015年10月には、共済年金は厚生年金に統合されました。主な特徴は以下のとおりです。
- 加入期間と給与に応じて受給額が変わる
- 厚生年金より高い受給額の傾向がある
- 遺族年金や障害年金にも対応する
共済年金は、退職手当と併せて受け取れるため、公務員の退職後の生活保障として重要な役割を果たします。共済年金期間と厚生年金期間は合わせて計算されるため、転職した場合でも年金受給権が保護される点が特徴です。年金額の計算方法は厚生年金と同様です。しかし、共済年金のほうが一般的に受給額が高くなります。
ただし、受給額は個人の状況によって異なるため、詳細は年金事務所や共済組合に確認しましょう。
【職業別】年金の平均受給額

年金の受給額は、職業によって異なります。以下の職業別に解説します。
- 会社員
- 自営業
- 公務員
会社員
会社員の場合は、厚生年金への加入が一般的です。平均受給額は2021年度で月額約14.5万円ですが、金額は加入期間や報酬に応じて変動します。40年間加入して平均的な収入だった場合、受け取れる年金は月額約22万円です。年金受給額は、収入が高い人や正社員、男性のほうが一般的に高くなる傾向があります。
60歳以降も働く場合は、在職老齢年金制度の対象です。繰上げ受給や繰下げ受給の選択も可能です。年金以外にも、退職金や企業年金なども確認しましょう。
自営業

自営業者の年金は、国民年金への加入が基本です。平均受給額は月額約5.5万円ですが、年金だけでは老後の生活を支えることが難しい状況です。対策として、自営業者に向けた国民年金基金や、iDeCo(個人型確定拠出年金)などの任意加入の制度があります。早めの対策で、将来の年金受給額を増やしましょう。
年金の受給額は納付期間や保険料納付額に左右されるため、以下のポイントを心がけましょう。
- 保険料の納付率を高める
- 経営状況を安定させる
- 免除制度や猶予制度を検討する
自営業者の中には、配偶者の扶養に入ることで厚生年金の対象になる場合があります。事業規模を拡大すれば、厚生年金に加入できる可能性もあります。老後の生活を安定させるためには、年金だけでなく私的年金や貯蓄も欠かせません。自営業者は、計画的な資産形成を心がけましょう。
公務員
公務員の年金は一般的に厚生年金よりも高額で、平均受給額は月額約22万円です。公務員の年金が高くなりやすいのは、長期間の安定した雇用や退職金制度の充実、共済組合の福利厚生などが理由です。国家公務員と地方公務員で若干の差がありますが、勤続年数や退職時の役職により受給額の差が出ます。
30年以上勤務した幹部職員の場合、月額30万円を超える年金を受け取るケースが一般的です。ただし、2015年10月以降は厚生年金に一元化されたため、将来的には民間企業との年金の格差が縮小すると予想されます。公務員の年金は、老後の生活保障が手厚く、安定した老後生活が期待できる制度です。
【世帯別】年金の平均受給額

年金の受給額は、世帯の構成によって異なります。以下のケースを解説します。
- 共働き夫婦
- 会社員と専業主婦
- 自営業の夫婦
- 単身の会社員
共働き夫婦
共働き夫婦の年金受給額は、単身者や片働き世帯よりも高額になる傾向です。夫婦2人分の基礎年金に加え、それぞれの厚生年金が加算されるためです。平均的な共働き夫婦の年金受給額は月額約22万円で、老後の安定した収入源として期待できます。共働き期間が長いほど、受給額が増加する傾向があります。
ただし、夫婦の収入格差が大きい場合は受給額に差が出る点に注意しましょう。共働き夫婦の年金対策として、以下の方法がおすすめです。
- 第3号被保険者制度
- iDeCo
- 繰下げ受給
共働きの場合でも、相手が国民年金のみの場合は受給額が下がる可能性があるため注意が必要です。年金以外の老後資金の準備も早めに検討しましょう。
会社員と専業主婦

会社員の夫と専業主婦の世帯の年金受給額は、平均で月額約22万円です。世帯の年金受給額は、夫の厚生年金と妻の国民年金(第3号被保険者)を合算して考えます。受給額の内訳は、夫が平均約16万円で妻が約6万円です。専業主婦の年金額は国民年金のみのため、妻の年金額は低くなります。
一方、夫の収入や勤続年数によって受給額が変わるため、年金受給額は世帯によって異なります。共働き世帯に比べると、会社員と専業主婦の世帯の年金受給総額は少ない傾向です。妻が就労しておらず、独自の厚生年金を受け取れないことが理由です。夫が亡くなった場合は、妻は遺族年金の受給対象者となります。
離婚した場合は年金分割制度があるため、婚姻期間中の年金権を分割可能です。妻側にも配慮した制度は、専業主婦の経済的な支えになります。
自営業の夫婦
自営業の夫婦は国民年金の加入が前提で、年金受給額は一般的に会社員夫婦よりも低い傾向です。夫婦ともに国民年金の場合、平均的な受給額は夫婦合わせて月額約13万円です。自営業で年金を受け取る際は、以下の特徴を認識しましょう。
- 事業収入の変動で保険料納付が不安定になる
- 老後の生活費確保のため自助努力が求められる
- 国民年金基金や個人年金保険で上乗せできる
自営業の夫婦が老後の生活を安定させるには、個人事業主向けのiDeCoの活用も有効です。夫婦で協力して、事業と家計、節税対策と年金受給額のバランスを調整しましょう。事業承継や、廃業時の年金への影響も忘れずに確認してください。
自営業の夫婦の場合、独自のポイントに注意しながら、計画的に老後の資金準備を進めましょう。
単身の会社員

単身の会社員の年金平均受給額は、約14万円です。月給28万円の会社員が40年間勤務した場合の試算で、老齢基礎年金(満額)と老齢厚生年金を合計した金額です。単身世帯のため、配偶者の加給年金は対象外ですが、加入期間や報酬額で受給額に個人差が出ます。厚生年金の加入期間が短いと、受給額が減少します。
将来的に不安がある場合、退職金や貯蓄など、追加の老後資金の確保も必要です。老後の生活に備える方法として、以下の対策が挙げられます。
- iDeCoやNISAの利用
- 退職金の有効活用
- 計画的な貯蓄
老後も平均的な生活水準を維持するには、年金だけでなく追加の資金計画が必要です。自分の状況に合わせて、早めに準備を始めましょう。
年金の平均受給額に関するよくある質問

年金の平均受給額に関するよくある質問を以下にまとめました。
- 年齢・性別による違いは?
- 受給額を確認する方法は?
- 年金を月25万円もらうために年収はいくら必要?
将来の年金に不安がある人は参考にしてください。
年齢・性別による違いは?
年金の平均受給額は、一般的に男性のほうが女性よりも平均受給額が高くなる傾向があり、年齢による違いもあります。年齢が上がるほど平均受給額が増加しやすく、60代前半よりも、60代後半から70代の受給額が高くなりやすい点が特徴です。男女間の格差は、一般的に年齢の上昇とともに拡大します。
ただし、女性のほうが長寿のため、高齢になるほど女性の受給者数が増え、全体で見ると格差が縮小します。世代による違いもあり、若い世代ほど将来の年金受給額が減少する見込みです。理由として、年金には世代間格差が存在し、若い世代ほど不利になるためです。同じ年齢でも、職業や勤務年数によって受給額に差が出ます。
会社員と自営業者では、基本的に受給額が異なります。公務員についても、受給額が異なる共済年金の対象です。勤務年数が長いほど、受給額は高くなる傾向があります。年金の平均受給額は、年齢や性別、職業など、さまざまな要因によって変わります。自分の状況に合わせて、将来の年金受給額を確認しましょう。
受給額を確認する方法は?

受給額を確認する方法の中で最も簡単なのは、ねんきんネットの利用です。ねんきんネットとは、インターネットを通じて自分の年金情報を確認できるサービスです。受給額を確認したい場合、以下の方法があります。
- ねんきんネットの利用
- 年金事務所への訪問・電話
- 年金定期便の確認
- 年金請求書の発行(事前送付用)
ねんきんネットを利用できない場合は、年金手帳に記載の基礎年金番号を使って、日本年金機構に電話による問い合わせが可能です。ただし、時期や時間により混雑する可能性があるため、時間に余裕をもって連絡しましょう。年金相談センターや市区町村の国民年金担当窓口でも、直接相談して確認できます。
厚生年金の加入者は、勤務先の年金担当者に確認してください。将来の生活設計を立てるためにも、自分の年金受給額は、しっかりと把握しましょう。
年金を月25万円もらうために年収はいくら必要?
年金を月25万円受け取るには、年収約600万円が必要で、厚生年金の標準報酬月額が28〜30万円程度になる収入水準です。特徴や内訳は、以下のとおりです。
- 40年間継続して保険料納付
- 国民年金(基礎年金)は約6.5万円
- 厚生年金は約18.5万円
年金額を増やすには、収入を上げたり、加入期間を延ばしたり、企業年金や個人年金で上乗せしたりする方法が挙げられます。老後の生活設計には、年金だけでなく貯蓄や資産運用も重要な選択肢です。自分の状況に合わせて、適切な対策を考えましょう。
まとめ

年金は、老後の生活を支える重要な収入源です。ひとり親や子育て世帯の人は、将来の年金受給額を考えながら、今のうちから準備を進めることが大切です。追加の貯蓄や資産形成を始めるなど、必要に応じて対策しましょう。年金制度は複雑で変更も多いため、定期的に情報をチェックしてください。
不安な点があれば、年金事務所や専門家に相談してください。年金だけでなく、総合的な老後の資金計画を立てましょう。家計や保険の見直しなども併せて検討し、安心できる老後生活を目指してください。